ドイツ(ゲルマン)音楽の形成/フルトヴェングラー鑑賞室

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ドイツ(ゲルマン)音楽の形成

ゲルマン芸術が、まず何よりも理念、観念の芸術(あるいは哲学的芸術)であるのは、ロマン派以降の大きな特徴であるが、それを具現するために音楽家が行う和声的処理は、音楽の微妙な変化やそれに伴ういわゆる「アウフヘーベン(止揚)された音」を生み出す。

その結果、伝統的なゲルマン的表現様式は、まるで「アゴーギグの音楽」とでも呼ぶべき様相を呈するのである。これはイタリアの「イン・テンポ(テンポを動かさないで旋律を豊かに歌いあげること。イタリア・オペラで用いられる)とコル・カント(歌に合わせて)の音」とは対極をなす音楽語法であった。

フルトヴェングラーとトスカニーニの語法の差は、すなわちゲルマンとイタリアの差であったわけである。ここで問題とすべきは、この二人の巨匠の登場と相前後して、この二つの対極化した語法のクロス・オーヴァー化が始まったのである。

イタリア・オペラ(特にヴェルディ以前のワーグナーに「汚染」される前のイタリア・オペラの世界)が、確固たる様式美を保っていたのに対して、ドイツ音楽は伝統的語法に様々な異なる要素を導入しつつ変化してきた。

(注)アゴーギグとは、速度を速くしたり(アッチェレランド)遅くしたり(ラテンダンド)微妙に揺らしたり(テンポ・ルバート)して、音の表情に変化を与え、音楽に生き生きとした動きをもたらす技術のこと。

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