古典形式/フルトヴェングラー鑑賞室

フルトヴェングラー鑑賞室 TOPフルトヴェングラーの傾倒した作曲家の演奏分析→古典形式

古典形式

フルトヴェングラーというとロマン主義者の旗頭のように思われがちだが、ロマン主義というのは内容が形式を上回り、やがて形式破壊につながってゆく傾向をもつ。

フルトヴェングラーのバッハやモーツァルトを聴くとそう思われるのも無理はないが、彼はいつも全体の造型、形式を強固に把握する芸術家であった。すなわち古典音楽を守る者であった。

ブルーノ・ワルターなども同様で、彼等がどれほどテンポを動かし、人間的な音のドラマを付け加えようと、それは一つのデフォルメに過ぎない。

むしろ、初めから古典的な形式感覚を欠いていたクナッパーツブッシュこそロマン主義者の肩書きに相応しいのであるが、それはフルトヴェングラーとクナッパーツブッシュのワーグナーとブルックナーを比較すれば理解されるところで、フルトヴェングラーの表現は常に古典形式に立脚していた。

(注)ブルーノ・ワルター(1876〜1962)ドイツ生まれ。アメリカの名指揮者。モーツァルト、マーラー作品を得意とした。著書『主題と変奏』など。

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