印象 /フルトヴェングラー鑑賞室

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印象

現在の演奏家はもはやそれを解しない。

トスカニーニの革新は、今ではもはや常識なのであって、フルトヴェングラーの「心的出来事の追認」というロマン的解釈もまた予備知識として彼らの頭の中にインプットされている。実際にはそれらのいずれもが「止揚」されたのである。

その上に今の世のクールなスマートさを付け加え、表面の美麗な感覚面を追い求めがちである。それには20世紀後半の卓越した技術が裏付けとなる。

また生演奏を主体とする演奏様式もフルトヴェングラーの時代の特徴の一つである。フルトヴェングラーの効果は、ライヴ演奏の場合により効果的であり、繰り返しの聴取に耐えないものではないが、自宅で冷静に聴くには若干しつこすぎる面もある。

グレン・グールドが演奏旅行から帰った時に、「その演奏はあらゆる種類のダイナミックでいっぱいだった。」というようにライヴの大ステージではどうしても表現が大味になってしまう。表情たっぷりのデュナーミクとかルバートその他はステージ向きの習慣である。

ありとあらゆる恣意的な工夫が廃れた原因に、録音の普及がないとはいえない。

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