歴史の体現者/フルトヴェングラー鑑賞室

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歴史の体現者

フルトヴェングラーは第二次世界大戦中も祖国に留まり、ドイツ音楽の伝統を死守しようとしたが、その結果、ハーケンクロイツ旗の占めるホールで、ヒトラーのために「第9」を指揮せざるをえないような状況に追い込まれてしまった。

こうした状況は、ナポレオン軍の侵攻してきたウィーンに留まって作曲を続け、人間解放を謳う過激「フィデリオ」を初演したベートーヴェンの姿勢に通じるものがある。

フルトヴェングラーのベートーヴェンが強く訴えかけてくるのは、こうした歴史の体現者としての苦悩が重く刻印されているからではないだろうか。

そのフルトヴェングラーは第二次世界大戦後、1951年に復活されたバイロイト音楽祭における幕開けに、それこそ一期一会ともいうべき「第9」を演奏した。

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